5月ののべるちゃん【鶴首千春】

 5月に読んだScript少女のべるちゃんの作品から1作、つらつらと感想をば。
 多少のネタバレを含みます。
 今回は【春の傑作】企画より、『鶴首千春』をピックアップ。
 3月投稿の作品ですが、私が読んだのは5月です。相変わらず2ヶ月ぐらい読むのが遅れてます。積ん読ならぬ積んノベは増えるばかり。
 
 まあそんな私の愚痴はさておき、本作の内容です。
 舞台は三月下旬の公園。桜が咲き誇り美しい景色が広がります。
 そこにいるのは本作の主人公でもある堀井千春と、彼女が想いを寄せる坂中涼。
 高校卒業を機に千春は涼に告白するが、撃沈してしまう。
 しかし彼女は意外にも沈むことなく、ふたりでまたお花見に行けたらいいねと語り合う……。
 
 そしてそれから毎年、千春は桜の元へ訪れて1年の報告をするのです。
 ここからはお花見に行くのも行かないのも自由です。まあ行かないとすぐにエンドになるのですけど。ちなみに行かなくてもバッドエンドではないので、ご安心ください。
 2年経つと成人になります。お酒を飲めるように。
 その後も自分の夢に向かって進んだり、思うようにいかなかったり……。
 
 辛い。切ない。
 努力は報われず、夢を追い、学生の時の恋が忘れられず独り身。
 世間との乖離はどんどん進んでいき、友人との、更には子供だった姪とも差が生まれます。
 
 ただ千春はまったく気にしてません。
 もちろん夢が叶わないことに対して思うところはありますが、世間で言う幸せの結婚や出産ができずとも前を向いて(例え苦笑いでも)笑っています。
 
 その姿に私を含めた読者は非常に勇気づけられたのではないでしょうか。
 月日が経つとみんな、おじさんおばちゃんに。時の流れは残酷ですね笑。
 
 この作品は千春の心の強さだけではなく、大切な家族との別れ、永遠とも思われた時間の終わり、そんなものも描いていました。
 
 今の状況が不安定で下向きな時でも、1年に1度ぐらいは笑える日があります。
 そんな日は笑っていいのです。後ろめたさも罪悪感も考えず、誰の許しも要らず、千春のように笑ってやりましょう。
 
 本作はちょっと新生活で疲れたり、失敗が続いてしまった人へ贈りたい1作でした。
 
 
 
 作者は味のある短編の作り手のRichardさん。
 企画は『春の傑作』。5月が終わるとユーザー投票期間が始まるそうなので、こちらも是非。
 
 
 
 

とあるノベルゲーム好きな天道虫

好きなノベルゲームを 気ままにプレイしてる虫の日記です。

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